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INTRODUCTION
年のある美しい春の朝、私はオーストラリア、クイーンスランド州の首都ブリスベンの、とある眺めのいい公園のベンチに腰掛けていた。時間は朝6時。
方は国立公園に囲まれ、一方は道路に面しているこの公園では、多くの人々がジョギングやウォーキングを楽しんでいた。
はすっきりと青く晴れ渡り、最近の雨で緑は活き活きと茂り、小鳥たちはそこら中 楽しそうに飛び回り、春を謳歌している。全く、生きていることにに感謝したくなるような、そんな朝だったのだ。
園に面した車の通りの多い道路近くには、犬を連れたふたりの男性がいた。犬に関心のある私の注目は、自然とそのふたりの男性に向けられた。彼等は共に40歳ぐらいで、一人はゴールデン・レトリバーのオス、もう一人はジャーマン・シェパードのメスを連れていた。二匹の犬は健康そのものであり、飼い主にとても愛されている様子だった。
たりの男性はお互いに顔見知りではないようだったが、ともに犬たちに基本的なしつけのトレーニングをしているところだった。
はまず、ゴールデン・レトリバーが、一人目の男性とともに歩行の練習をするのを見ることにした。犬に引き綱はつけられておらず、男性は犬をさかんに誉め、褒美として食べ物を与えていた。犬の関心は専ら男性の手に集中しており、嬉しそうな顔や盛んに振られている尾の様子から、犬がこのトレーニングを心から楽しんでいることがうかがえた。
かし、時として犬は、大きな音をたてて走る車のエンジン音や道路の向こう側で吠えている犬、芝生から立ちのぼる匂いなどに関心を奪われ、男性が呼んでもすぐにはやって来ないことがしばしばだった。それでも男性は犬を盛んに誉め、食べ物を与えるのだった。まさに、愛情にあふれる飼い主と犬を絵に描いたような光景であった。
に私の関心は、二人目の男性とジャーマン・シェパードへと移った。彼等はかいがいしくトレーニングをこなしていたが、この二人目の男性のやり方は先程の一人目の男性とは遥かに違うものだった。
人目の男性と犬は、数々のパターンの歩行やターンの訓練、急な停止、座れ、伏せなどのトレーニングに深く集中しており、伏せなどのときは、犬はまるで自分の体を芝生の上に投げ出すかのようだった。犬のに顔は深い集中力が見て取れ、引き綱はゆるくかかっているにもかかわらず、走っている途中の急な停止やターンなどの難しい命令にも、まるで男性の左足に糊でぴったりとくっついているかのように機敏に動くのだった。
分後、二人目の男性は犬から引き綱とチェーンをはずし、私の座っていたベンチの上、彼の朝刊の横に置いた。その後彼等は再びトレーニングを始め、犬は飼い主の指示に従っては、軽く誉めてもらっているのだった。
はことに、二人目の男性が犬に褒美として食べ物を与えていないことに注目した。
分か後、ゴールデンレトリバーは一人目の男性のもとを離れ、二人の男性の間にいたジャーマンシェパードに挑戦しようと駆け寄った。一人目の男性が戻るよういくら呼んでも、犬は彼を完全に無視しており、メス犬を前に敵意をあらわにするのだった。二人目の男性はゴールデンレトリバーの敵意を見て取り、すばやく2匹の間に立ちはだかり、ジャーマンシェパードに合図をし、座らせたのだった。
ャーマンシェパードは、飼い主である二人目の男性が静かに堂々と行動し、ゴールデンレトリバーが躊躇する様子を静かに見ていた。
人目の男性の行動は、一人目の男性がようやくこちらにたどり着き、ゴールデンレトリバーを押さえつけるまで、ゴールデンレトリバーの敵意をそらせておくに充分な時間を稼いだのだった。
人目の男性は見るからに人が良さそうな人物で、二人目の男性に謝り、会話を始めた。一人目の男性はしきりに自分のトレーニングのやり方について語り、二人目の男性にも自分のやり方を勧めるのだった。彼はしきりに犬はトレーニングを楽しまなければいけない、自分は決して強制的には犬の間違いを正さない、犬を誉めるときはいつも食べ物を与える、なぜなら食べ物こそ犬にとって最高のご褒美だからだと、くり返し言うのだった。彼は稀にしかチェーンや引き綱を使わないが、結果には満足しているとのことだった。彼の犬はすでにCDオベディエンス・タイトルを取得しており今はCDXタイトル取得を目指している、ということを彼は得意な様子で付け加えた。
人目の男性は、一人目の男性のアドバイスには感謝しつつ、自分のやり方に満足している旨を伝え、二人は挨拶をして別れた。
の後、一人目の男性はゴールデンレトリバーのためにフリスビーを投げ始めた。一方、二人目の男性は犬を道路に背を向けて座らせ、自分は50歩ほど離れた場所でベンチに座り、新聞を読み始めた。
よそ5分たった頃、小型の雑種犬が、種類のはっきりしない2匹の大型犬に追われて、私達の方へ走って来た。犬たちは、ゴールデンレトリバーとジャーマンシェパードの間を通り、道路の方へと走り抜けて行った。ジャーマンシェパードは、じっと
ったまま、少しだけ興味を持ってこの一部始終を見ていた。しかしゴールデンレトリバーは、飼い主の男性がび戻すのも聞かず、この犬たちの追いかけっこに加わったのだった。
うとう犬たちは道路へ達し、小さな犬は道路の反対側の安全な場所へと走り抜け、あとの2匹もそれに続いた。しかし、悲痛なブレーキの音と、続く鈍い音のあとには、ゴールデンレトリバーが横たわっていたのだった。
人目の男性はゴールデンレトリバーのもとへ走り寄り、犬を公園へと担いだ。私も二人目の男性とともに急いで助けに向かったが、犬はすでに瀕死の状態であった。一人目の男性はかなりのショックを受けており、私に獣医のもとへ車を走らせるよう頼
だ。
人目の男性はジャーマンシェパードのもとへ戻り、犬を「座れ」の命令から解き、自分の車の中に座らせ、私たちの車に続いた。
念なことに、ゴールデン・レトリバーは直後に死亡し、私は飼い主の男性を家まで送ったのだった。言うまでもないことだが、男性は愛する友を亡くした深い悲しみにうちひしがれていた。
は二人目の男性と公園に戻り、彼の犬とアイスクリームを食べながら、たった今起きた事故について語り合った。彼は、もしあの犬が主人と"遊びながら"トレーニングするのではなく、きちんと服従するようトレーニングされていたならば、あのように
らく、無駄な死に方をせずにすんだものを、と苛立ちを隠しきれない様子であった。
は、以前検疫犬ハンドラーをしていたロス・デイビッドソン。ここに書かれた話は実際に起きた出来事で、公園にいた二人目の男性こそ、この本の著者であるロス・アラン氏である。
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